地理本ジャーナル

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【書評】100年生きる覚悟を迫られる 『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』

 

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

 メッセージはとてもシンプル

400ページ近い大著ですが、言っていることは単純なので意外なほど速く読めます。

  • 「100年生きるから、今までの学生→現役→老後っていう3段階論は通用しなくなるよ」
  • 「キャリアの切れ目が何度も訪れるから、お金や家など有形資産を蓄積することも大事だけど、人のネットワークやビジネスススキルを年代に応じて身につけていかないとダメだよ」

角度を変え、データを提示して、丁寧に繰り返し論じています。

3つの世代別戦略

「1945年生まれ(2017年現在で72歳)」「1971年生まれ(同46歳)」「1998年生まれ(同19歳)」の登場人物が、それぞれどのような人生戦略をとるべきかについて具体例を交えながら語ります。

1945年生まれは、なんとか現在の3段階論で生きていける最後の世代。同一の準拠集団で生きていける。しかし1971年生まれ以降はそれでは厳しい。今までのキャリアにプラスアルファの知識をつけるか、パートナーと協力して思い切ったキャリアチェンジを図るべき、会社以外の経験を増やしたり、ネットワークを拡大すべきだと述べます。

相当な貯蓄をしていっても(1998年生まれの場合は所得の25%!)、100年生きる場合、65歳で引退し、35年間を無職で過ごすというのはすでに困難。現在の60歳は20年前の60歳とは健康状態が異なる。健康なまま80歳まで生きる可能性が高いと言います。そうなれば40歳であっても75歳までの35年のために、新たな無形資産を形成する必要がある、労働する期間を少しでも延ばすことが重要な戦略であるのです。

何度もキャリアチェンジすることを前提として生きる

そもそも個人事業主中小零細企業の代表で、60歳引退は少ない。サラリーマンだけが定年制度の恩恵に預かっているとも言えるのです。

医療はますます発展を遂げるでしょうし、現在の人類は栄養状態も高いことを考えると少なくとも75歳くらいまでなんらかの形で社会に貢献し、所得を得ていかなければならない社会がやってくるのではないでしょうか。

好きなこと、長く取り組めることをどの年代であっても求める必要があると感じました。これは「言ってはいけない」の橘玲さんも繰り返し著作の中で述べています。いかに優位な働き方を実現するための環境を手に入れるか、人的ネットワークの形成をどのように行っていくか ということの重要性を改めて感じました。

翻訳を読むと思う、意外と普通な日本

著者はイギリスの学者。性別役割分担であったり、一つの会社で定年まで勤め上げることが一般的であったり、高齢者の労働参加率が低かったりというのは、何も日本だけのことではなく、イギリスも同様なのだ。翻訳を読むことによる気づきでした。

長生きの可能性が極めて高い、現世を生きる日本人が読むべき本でしょう。ぜひ皆さんも一度お手にとってください。