地理本ジャーナル

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【書評】すぐに行ける昭和。地域や路線の奥行きを実感するシリーズ『東京 消えた!全97駅』

 

東京 消えた! 全97駅 (イカロス・ムック)

東京 消えた! 全97駅 (イカロス・ムック)

 

 東京のJR、民鉄ごとの廃駅を丁寧に説明していく中身の濃い本です。イカロス出版らしい、乗り物への愛情と敬意を感じる、ツルツルした紙にパンチのあるデザインが所有欲を満たしてくれます。

一駅につき2〜3ページ、新旧の地図、路線図、切符、写真をふんだんに取り入れながら、開業と廃止の経緯を語ります。華美に装飾されていない、淡々とした文体に著者の高い見識を感じます。まさにダンディズム、かっこいいです。コラム風にまとめらめている廃駅訪問記も、空気を感じてみたいと思わせるいい感じの一服清涼剤です。

廃駅は何が面白いの?と聞かれますが何でしょう。ほとんど痕跡はない。往時の佇まいを想像させるしかないのですが。

戦争を初めとする社会情勢の変化、国、個々の会社の財政状況の変遷、技術革新による運輸技術の発展、民鉄同士の攻防、都心進出への野望、様々な要因が絡み合った結果が廃駅という判断にいたっている。「なくす」に至ったストーリーを重ねているんだと思います。

この本は、そのあたりをしっかりフォローしてくれる情報量と内容です。提供してくれた著者に感謝したいと思います。 ありがとうございます!