地理本ジャーナル

地理、鉄道、道路、地形、山、たまに政治経済。の周辺をとにかく紹介していくブログです。

【書評】新書なのに重い、濃い、地下鉄よりも大深度地下よりも深い愛しか感じない『地図と愉しむ東京歴史散歩 地下の秘密篇』

実際カラー版だという理由もあるでしょう。しかし、なんというか、よくもまーここまで綺麗に詳細にまとめられたなというのが率直な感想です。

竹内さん、執筆にどんだけ時間かけたんでしょう。940円は安い。

カラーということもあり、全体的に美しくリアリテイがあるのですが、特に圧巻なのは冒頭の26ページ。都内にある全地下鉄路線のカラー断面図が鮮やかに掲載されています。駅だけでなく、他の地下鉄路線、JR、民鉄、河川や高速道路も描かれています。高低の位置関係がよくわかります。

以前、東京都立中央図書館で開催された企画展示、「東京の鉄道史 鉄道が築いた都市、東京」に展示されていた「東京動脈」の書籍版という佇まいです。これはなかなかの力作。

銀座線、表参道から渋谷駅のに向かって若干勾配を上げている感じも表現されている細かさ。このディテールは、かなりテンションが上がってしまいます。

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地下だからすんなりと開業にこぎつけたと思われる地下鉄建設が、実際はいかに苦労があったのか。政治的な要因、地形の影響、時の国際情勢などあらゆる要素が現在の地下鉄ルート、駅の位置、高さにどれほど影響を与えているかを膨大な資料をもとに丹念に解きほぐしていきます。

マーケティングの観点から、どうしても都心ばかりを取り上げてしまいがちな地理本ですが、このシリーズは違う。赤羽などの東京北部や都下(市部)もしっかりと取り扱っているところが嬉しいです。

歴史に地形や地下の世界が加わることで、奥行きが生まれて、なんとも豊穣な世界が作り出されています。東京に対する竹内さんの愛を感じざるを得ないのです。ここまで調べられないですよ、すでに4冊目ですし。

東京って、鉄道って、地下鉄っていいもんですね。ぜひご一読を。

カラー版 - 地図と愉しむ東京歴史散歩 地下の秘密篇 (中公新書)