地理本ジャーナル

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【書評】知財戦略とは「見せない」ことを決めること? 『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?―特許・知財の最新常識』(新井信昭)

 

レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?:特許・知財の最新常識

レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?:特許・知財の最新常識

 

こんばんは。じょんじです。今日ご紹介するのは、最近個人的に気になっている「知財」分野の一冊です。

 とにかくわかりやすい

高校卒業後、様々な職業や海外放浪を経て39歳で弁理士になった著者です。普通の人がわかりやすいレベルを肌感覚でわかっているのでしょう。特許を中心に知的財産の難しい点、退屈な点を平易な言葉で説明してくれています。知財(法)の何が退屈って、アイデアや技術のイメージとは対極にある地道すぎる手続きの話が多すぎるところです。そこをわかりやすく、手続きの意味するところを腹落ちするレベルまでへりくだって説明してくれています。取り上げている題材やエピソードも面白く、分量もそれなりでさらっと読めます。先日紹介した楽しく学べる「知財」入門と並ぶわかりやすさです。

jonjis.hateblo.jp

 特許を取ればいいってもんじゃない

 著者が本書で繰り返し述べていることは2点。

  • 知財戦略=特許取ることじゃないよ。技術やアイデアはどこを見せないか決めるべきだよ(特許は出願した段階で、インターネットを通じて世界中に知れ渡っちゃうよ)
  • 日本の産業界は脇が甘すぎる。こんなことしてたらどんどん世界にアイデアが流出しちゃうよ。そのためにももっと知財マインドを持った人材が育たなきゃダメだよ

コカ・コーラのレシピは極秘中の極秘、という話はご存知の方も多いと思います。タイトルにもあるように本書にも登場するのですが、まさにそれが知財戦略だと著者は熱く語ります。絶対領域※思想で取り組めと主張します。※詳しくは本書に。

終始一貫して熱い。とにかく知財に対する愛情、日本の産業界、とりわけ中小企業への思いがほとばしる、これまでにない知財本に仕上がっております。

知財に興味のある大学生、法務部や知財部に配属されたあるいは異動になった社会人、弁理士試験の勉強でモチベーションが下がっている方にもってこいです。知財マインドに火をつけてくれると思います。おすすめすです。