地理本ジャーナル

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【書評】愛すべき「日本語」マニアが熱めに語る対談録。『書く力 私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹内政明)

 

書く力 私たちはこうして文章を磨いた (朝日新書)

書く力 私たちはこうして文章を磨いた (朝日新書)

 

渋谷が築地で大手町に恋をした?

竹内さんの表現は読売臭がする。オシャレだけどほんの少し野暮ったい。池上さんは公園通り臭。この本に限らずですが、解説を淡々としているように見えて、背後に知識や意見を潜ませてしまう感じ。それを受け止める白くて赤いインテリ刑事、朝日新書。本筋とは関係ない、そんなコントラストに目がいってしまいました。奇妙な取り合わせです。

導入部から愛情たっぷりです。池上さんが、どんだけ竹内さんの「編集手帳」を愛しているか、尊敬しているかがわかります。「激アツなラブラブ感がパネー感じ」です。築地の新聞社が受け皿になるなんて、iPhoneサムスンの液晶が使われているみたいでいかにも現代風です。お互いのいいところは尊重しよう。

帯にある「ここまで明かしていいんですか?」ってほどの奥義はない

題材を提示されながら説明されると、すごい考えてんだなー、準備してんだなー、すげーな、とかいう単純な尊敬の念は湧いてきます。ただ、テクニック自体や文章トレーニングの方法は、まあ、それほど目新しいものではない。

「書き出しと締めくくりを、最初に決める」
「とにかく削る」
「名文を書き写す」「リズムが生まれる」
「事実を淡々と書いていく。ここぞというところだけ、アイデアとテクニックを駆使して表現する。」
お互いの文章を褒め合うのも、鼻持ちならないかんじ、あります。対談形式ってどうしてもこうなっちゃう予定調和なところありますね。「まさしくその通りです」「同感です」とか出てきます。

それでも、おっさ、、、もとい名人二人、楽しそうです

なんですが、日本語で表現できることの喜び、それがビンビンと伝わってきます。二人の思惑通り、読んだ人をしっかり書くことに向かわせている。
「部品のコレクションを準備しているのといないのでは、文章を書く楽しさが違ってくる。」
「いつも、もだえるように苦しんで、絞り出しています。」
 てなことを、ニヤニヤしながら語っている様子が伝わってきちゃうんです。「ドS」であり「ドM」でもあると公言する坂上忍が芝居を愛するように、文章を書くということ、表現するということへの恋焦がれる気持ちが吹き出っぱなしなのです。
 
竹内さんが参照する「雨のことば辞典」を手元に置いておこう。
ブログ書きを勇気づけてくれる本です。ぜひ一読することをオススメします。
 
もちろん、書く手を遅らせる効用があることも申し添えておきます。悪しからず。