【書評】巨大開発、オリパラだけではない、投資サイドに参加する新しい建築家の座談会も。『東京大改造マップ2017−2020』(日経BPムック)
日経アーキテクチュアなど日経建築・不動産系雑誌の記事をリライトして整理されたムック本です。発売日当日の昨日購入しました。
日経ブランドの安心感
2014年から随時発行されているシリーズ。日経ブランドの安心感があります。総工費などの経済性に関する記事についてもなんとく信頼感がある。成美堂出版や宝島社からも同様の本が出ていますが、そのあたりが大きな差別化要因になっているように思います。
2020年首都東京未来地図―航空写真で一望開発ラッシュ最新情報 (SEIBIDO MOOK)
- 作者: 成美堂出版編集部
- 出版社/メーカー: 成美堂出版
- 発売日: 2014/08/08
- メディア: ムック
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美しいエリア地図など(類書に比べて)改めて編集した感がしっかりある
現在話題になっている、「虎ノ門新駅周辺」「渋谷」「品川新駅周辺」あたりはもちろんしっかりフォロー。その他池袋や新宿に関する情報も。ほぼ全てのプロジェクトで施工者、面積、構造、竣工時期などの基本情報を載せています。個別のプロジェクトだけでなく、エリア全体の開発が可視化できるよう、見やすいエリア地図がふんだんに掲載されているのも本書の特徴でしょう。ただ全く同じ見出しが3つ重複するなど、雑誌記事の寄せ集め編集だなと思うところも若干ありました。
オリンピックも日経新聞的視点で言及
話題になっている、オリンピック、パラリンピック施設も大きく誌面を割いて取り上げています。総工費に特に着目。結局新設することになったバレーボール会場の「有明アリーナ」だけでなく、話題になっていないカヌー競技会場や体操競技会場の記事も掲載。これらの施設も、立候補ファイルから大幅に総工費が増えていることがよくわかります。
開発ネタだけじゃない、若き「インベストメント建築家」の座談会も
周りの記事はほぼ全てビル、土木分野である中、若き建築家の座談会記事も異質ですが面白い。典型的な建築家のビジネスモデルである設計費のみを得るものではなく、設計・リフォームした建築、施設に自らも出資して配当や上がりの一部をもらう「大家さん」モデルを作ろうとしている。ストックを活用するこれからの建築家の生き方が実例を元に語られています。彼らが参画するオシャレなリノベーション施設も存分に掲載されています。開発ものとはまた違った理由で、東京のこれからに期待が持てる、非常に楽しい内容です。
類書より扱っているエリアは少ないですし、道路・鉄道といったインフラ系の記事も少ないのですが、内容が深く、施工主からの借り物資料寄せ集めムック本ではないというプライドが伝わってきます。購入後の満足感が高い。ぜひお手元に。