【書評】”佐藤優”という一種の”ビタミンサプリ”
お節とお屠蘇と佐藤優
とてつもないペースで作品を発表し、なぜか年末年始になると、異様なほどに読みたくなるのが、佐藤優さんの作品です。
学生時代、社会科が好きだった、歴史が好きだったビジネスパーソンにとっては、現代と学生時代の知識が、綺麗に整理がされていくのが快感なんですよね。
学習参考書を推薦図書として進めてくるところも憎いのです。
目的が明確で、希望に溢れ、苦しいことも今となってはほろ苦い、あの頃のワクワク感、目標に向かって勉強していた頃の自分に戻れる感が、惑うサラリーマンに効いてくるのだと思います。
特に正月休みに読むのが、とても気持ちいい。大きな気持ちになりやすい時期ですからね。 かくいう僕もその一人です。
去年の年末も買いました、佐藤本と哲学、歴史の本。日本思想全史もその一つ。なんだかそういう気分にさせるのがこの時期ですな。
本当にビジネスパーソン”必須”の教養なのか。
一方で、”現代を生きるビジネスパーソンに必須の教養”的なキャッチがちょっと鼻についてしまうのも事実です。
「不動産屋さんの営業マンが必要な教養」と、「ドイツのトンカツ屋の店員がハンガリー人であること、豚がウクライナ産であること」は、どう考えても結びつかないわけです。けれども読んでしまう。誰かに話したくなってしまう。
いつになるかはわからないけど、いつか外国人と仕事をすることになって、高級なレストランのディナーの席で、あるいはおしゃれなビジネスランチで披露するその日のために、準備をしているんだ、そう思っているビジネスマンも多いでしょう。ほとんどのビジネスマンにその日は来ないというのに。
トップエリートイメージをもつ本当はトップエリートではない分厚い層の人々が日本を支えている
少し古い統計ですが、読書習慣のある日本人は約半数であるとするものがあります。
半数のうち、文芸書ばかり読むという人もいるでしょう。多く見積もってもビジネス書や佐藤本のような教養書を読む人は、さらに半数のおよそ1000万人くらいと考えられるのではないでしょう。1000万人のビジネス書ユーザーがその気になって働いている、悶々とした気持ちを持って何かに取り組んでいる。世界は誰かの仕事でできている。そんな中上流の心意気を持った市井の自称エリートが日本を支えているのだと、思い起こさせる、年末の佐藤本ブームです。